この石が、私の心臓なんです。
信じられないかもしれないんですけど。
けど、この石が私の心臓で、それが今動いて私が生かされている、っていうことなんです。
最初は、私にも信じられませんでした。
だっておかしいじゃないですか、おかしい。
この小石が鼓動もしていないのに、私の心臓だなんて。
昨日、私は家の前で佇んでいました。
頭を抱えて、雨が降りそうな空に押しつぶされそうだったので。
でも、どうしても無理で、その場に座ったんです。それが運の尽きでした。
小石が言ったんです、こうしてずっと佇んでいろよ、って。
そのとき、私にはわかりました。こうして座っているのが、私にできる限界なんだって。それを、この心臓が教えてくれているんだって。
もちろんそんなこと、心臓は言いません。でも現に、動いて、そう言っているんです。ずっとこうして脈打っていることが、今までのようにできるならばどれほどいいだろうかって。そう思えてきてしまったんです。
それからずっと、私は家の前で佇んでいます。
ふるえながら座っています。頭のてっぺんから足のつま先まで。雨が降りそうな空はもうずっと続いていて、頭を抱えながら。
小石はもう冷たくなって、まるで小石のようです。
いつの間に小石になってしまったのか、私の心臓は。そう思ってももう後の祭りで、一度私はそう思ってしまった、そのことが全てなのです。頭のてっぺんから、足のつま先までふるえながら、私は鼓動を抱えています。それがいくら遠くなろうと、それは私の心臓です。もう一度言いましょう、それは私の小石です。この小石が、私の小石なんです。