クロワッサン / 眠られぬ夜

朝聞いた鳥の音を
思い出すみたいに
とりとめもなく
君の話を
聴いていたかった
朝が来ないのでは
意味がないのに

かつてのパン屋は
ずいぶん遠かった
手狭な店のなかで
あかるく挨拶する
幸せそうな人から
パンを買った
あの日のこと

クロワッサンには
幾つもの層があり
お皿の上に点々と
広がった
こぼれ落ちた滓を
勿体ないとばかり
拾いあげていた

鳥の音も君の声も
だいぶ遠くなって
それで静かなのか
窓から差し込んだ
わずかなひかりに
目のしばたく
三日月の夜